有限責任と無限責任
『有限責任』とは、出資者が出資した金額の範囲内で責任を負うことを言います。
これに対して、『無限責任』とは、出資者が出資した額を超えて会社の債務を無制限に負うことを言います。
有限責任・無限責任は、会社の破産時などに残った負債を、どの範囲まで出資者が負担するのかという責任の広さによって区分されます。
株式会社の出資者である株主は有限責任を負いますが、中小企業のオーナー社長の多くは事実上の無限責任を負っています。
事業形態による分類を下図で紹介いたします。
物的組織 | 人的組織 | |||
法人 | 組合 | 個人 | ||
有限責任 | 株式会社 | 合同会社 | 有限責任 事業組合 |
|
最低1人以上の 無限責任構成員 |
合資会社 | |||
全構成員無限責任 | 合名会社 | 民法組合 | 個人事業主 |
有限責任について
「有限責任」とは、出資者が出資した先の会社が倒産したときなどに、その会社の債権者に対して、出資した額を限度として責任を負うことを意味します。
つまり、「有限責任」とは、会社がつぶれたときに出資したお金は消えてしまうが、それ以上の責任を負わないということです。
株式会社Bが250万円の負債を負って倒産した場合、株式会社Bの株価は無価値になるため株主である出資者Aは出資額100万円を失うことになります。
出資額100万円を失ってもなお、150万円の負債は銀行などの債権者に対して残ることになりますが、出資者Aはこの150万円については責任を負わないというのが有限責任の特徴です。
残りの150万円の負債は、債権者である銀行などが負担を負う形になります
責任の形態としては、無限責任が最初にあり、後に有限責任という形態が登場しました。
産業革命以降、鉄道施設の建設や貿易事業など、多額の資金を多くの出資者から集めて大きな事業を行う必要が出てきました。
しかし、出資者が無限責任を負わされるのでは、事業失敗時に多額の借金を負う可能性があるため出資できません。
そこで、この有限責任という制度が登場したのです。
銀行などの債権者に直接責任を負うのではなく、出資した会社に対して出資額だけの責任を負っています。
つまり、出資者は債権者に対して「間接的に」責任を負っています。このような責任を「間接責任」と言います。
現在、間接有限責任を負う者だけで構成される会社形態は、「株式会社」(特例有限会社を含む)と「合同会社」です。
また、民法組合の特例である有限責任事業協同組合の組合員は、有限責任です。
無限責任について
「無限責任」とは、会社が倒産したときなどに、銀行などの債権者に対して負債総額の全額を支払う責任を負うことを指します。
会社が保有するすべての資産を売却しても、債務を完済しきれない場合は、無限責任を負う者は私財を売り払ってでも、債権者に債務を弁済しなければなりません。
なお、無限責任を負っている人は、直接、債権者に対して債務を弁済する責任が生じます。
このように「直接的な」責任をもつことを「直接責任」と言います。
現在、この無限責任を負う者(無限責任社員)を認めている会社形態は、「合名会社」と「合資会社」の2つです。
「合名会社」は直接無限責任社員のみで構成される会社で、「合資会社」は直接無限責任社員と直接有限責任社員とが存在する会社のことを言います。
また、民法組合や個人事業主も無限責任を負う形態です。
無限責任社員の場合、会社に出資するときには、金銭的な出資だけでなく労務出資(労働することを出資すること)や信用出資(その人がもつ信用を出資すること)も認められています。
中小の株式会社のオーナー社長は必ずしも有限責任ではない
有限責任での例示のとおり、法人の財産・負債と個人の財産・負債は峻別(≒区別)されているため、会社が破産した場合でも,そのことによって代表者や取締役・役員が法的責任を負うことはないというのが原則です。
それでは、株式会社のオーナー社長は有限責任なのでしょうか。
日本国内の場合、中小企業が金融機関から融資を受ける際には、多くの場合、社長の個人保証を求められます。
つまり、会社が債務を弁済できなくなった場合に、社長個人として借金を肩代わりするということです。
まとめ|有限責任と無限責任のメリット・デメリット
事業会社側の人間にとって、有限責任と無限責任どちらが良いのかと言えば、それ自体は言うまでもなく、出資額を限度として債務を負う有限責任の方です。
そのため、有限責任と無限責任のメリット・デメリットを考える上では、個人事業主と比較したときの法人化のメリット・デメリットに命題を変えて考えることが欠かせません。
下記のメリット・デメリットをご覧いただき、今後のみなさまのご一助になれれば幸いです。
・取引先や金融機関からの信用が高まる
・330万円超えの所得であれば、個人事業主よりも税負担が軽くなる
・自分の給与に給与所得控除が使える
・退職金を会社の損金にできる
・会社が従業員の社会保険料の一部を負担することで優秀な人材を確保しやすい
・決算日を自由に決めることができる(個人事業主は一律12月31日)
・設立時に費用がかかる(株式会社20万円~、合同会社6万円~)
・申告書の様式が煩雑となり、決算業務を自社で完結させることが困難となる
・複式簿記が必須となり、事務作業が増える
・所得が330万円以下の場合、税負担が個人事業主の場合よりも重くなることがある
・赤字でも法人住民税の均等割負担が生じる
・一定期間ごとに役員の改選手続きが必要になる(株式会社の場合)
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