開業するにあたって、個人事業主やフリーランスは、個人事業を開業したら、開業日から1ヵ月以内に事業の開始を税務署へ申し出なければいけないことになっています。
そのときに必要になってくるのが、「個人事業の開廃業等届出書」(「開業届」)です。
開業するには
開業するには、開業届を税務署に提出するだけで終わります。
形式的には、開業する内容を考える等の準備さえできていれば、
税務署に行って、開業届をもらい、その場で書いて提出するだけです。
(開業届を提出するのはとても簡単です。一応、下記にまとめてあります。)
大変なのは法人の開業です。
個人事業の場合、法人とちがい(事業者にとって大変な)「登記」という制度がありません。
開業届ってなに? 出す必要あるの?
開業届とは
「開業届」(個人事業の開廃業等届出書)とは、個人事業を開業してから1ヵ月以内に税務署に届け出なければならない書類のことです。
開業届の用紙(個人事業の開廃業等届出書)は税務署で簡単にもらうことができますが、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
提出することによって、毎年の年末(確定申告の時期)になりますと、税務署から確定申告に関しての書類が届くようになります。
個人事業主が廃業を決めた場合には、廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を作成し、所轄の税務署に提出する必要があります。
開業の際も廃業の際も個人事業の開業・廃業等届出書を提出する必要があります。
あらかじめ中に書かれている内容は同じですが、提出する事業主が記載する内容が異なります。
開業届を提出することは義務となっていますが、実情としては、(本業・副業に関わらず)開業届を出していない人が非常に多いです。
さらに、提出期限は、開業してから1カ月以内ということになっていますが、実際には期限を過ぎていても受理されます。
・果たして、開業届は本当に出さなくてはいけないものなのでしょうか?
・開業届を出すことによって得られるメリットはあるのでしょうか?
ここからは、開業届を出す必要性と、開業届を提出することによって得られるメリット・デメリットを説明していきます。
開業届を出す必要はない?
開業届は出さなければいけないことになっていますが、
「もし開業届を出し忘れたり・あえて出さなかったら」
どうなるか気になりませんか…?
………。
実は、出さなかったからといって、捕まったり、ペナルティを受けるということはありません。
開業届を提出することによって、毎年の年末(確定申告の時期)になりますと、税務署から確定申告に関しての書類が届くようになります。
つまり、開業届を提出しなければ、税務署から確定申告に関しての書類が届かないのです。
自分で税務署へ取りに行ったり、国税庁のホームページからダウンロードすることもできますが、確定申告をし忘れたり、しなかったりすると大変なことになる可能性があります。
故意・不注意関係なく、3月15日の期限までに申告や納税をしなければ、延滞税や無申告加算税等の申告漏れによるペナルティが課されることがあります。
重い税が請求されるケースもあるので注意が必要です。
結局のところ、(確定申告さえしていれば、)開業届を提出しなかったとしてもペナルティがありません。
しかし、それでは開業届を出す意味があまりありませんよね。
もちろん、そんなはずはなく、開業届を出すことによって得られるメリットがあるのです。
開業届を出すメリット
【メリット1】節税効果の高い青色申告をするには開業届が必要
開業届を提出することの1番のメリットは、節税効果の高い青色申告を行えることです。
青色申告は、「開業届」と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出することによって、個人事業主としての青色申告をすることができます。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2つの申告方法がありますが、節税効果の高い青色申告をするには原則として開業届の提出が必要になります。
自動的に白色申告という確定申告の申告方法をとることになります。
青色申告の特典
青色申告の特典としてあげられるものはたくさんありますが、ここでは4つほどあげさせていただきます。
◎所得から最大65万円を特別控除できる
◎「専従者給与」として家族に給料を払うことができる
◎赤字を3年に渡って繰り越すことができる
◎30万円未満のものを一括でその年度の経費にできる(合計300万円まで)
【メリット2】屋号で銀行口座が作れる
「屋号」とは、開業した自分の事業の名前です。
新しく、事業をはじめるときには、屋号で事業用の銀行口座を開設すると便利です。
たしかに、事業用の銀行口座をつくらなくても個人用の口座でなんとかなる場合も多いです。
しかし、プライベート用のお金と事業用のお金が判別しにくくなり、確定申告の際にめんどくさいことになりやすいです。
【メリット3】対外的な社会的信用(お得な制度にいろいろ申し込める)
「開業届」は対外的に事業を開始した証明になります。
融資や補助金・助成金の手続きの際にも必要ですし、取引先や顧客に対しても正規の手続きをしっかりと行っていることの証明になります。
また、お得な制度にもいろいろと申し込むことができます。
例えば、小規模企業共済なども、「開業届の控え」を提出することによって申し込むこともできます。
開業届を出すデメリット
【デメリット1】確定申告してないのがバレやすくなる(脱税しにくい)
開業届を出さずに事業をしている人と比べると、開業届を提出した時点で、当然、税務署に把握されているわけですから、確定申告をしていない場合、それがバレやすくなります。
専業の人なら年間38万円以上、副業の人は年間20万円以上の所得があれば、確定申告しなければいけません。
つまり、こっそりと脱税したいと考えている人にとってはデメリットとなります。
これは節税ではなく、脱税行為(=税法違反)です。
【デメリット2】失業保険が受け取れない可能性がある
失業保険は「再就職するために努力している人」に対しての手当です。
したがって、当然ですが、開業届を出している人は、その手当をもらう対象からは除外されます。
よほど、事業に勝算がない限りは、失業保険については、開業届を出すまでに受け取っておくのが無難です。
開業届の書き方・提出する方法
開業届を出した方がいいことは理解してもらえたと思いますが、それではどのように書いて提出すればいいのでしょうか?
開業届の書き方
開業届の書き方は、とても簡単です。
(この段落を飛ばして、税務署に向かっても問題ありません。)
① 「~税務署長」のところに所轄の(=提出する)税務署名を記入します。
② 納税地を記入します。
自宅で仕事をしている場合は住所地(=自宅の住所)を記入、事務所がある場合は事務所の住所を記入します。
また、住居地と居住地のちがいは、住民票がある住所に住んでいる場合が居住地となり、住民票の住所とは別の住所に住んでいる場合は居住地となります。
③ 「上記以外の住所地・事業所」、個人番号、屋号については、書いても空欄でも問題ないです。
④ 事業主(=あなた)の住所、氏名、職業、生年月日、屋号、電話番号を記入します。
(個人番号については、忘れていてもなんとかなります)
例:家庭教師、せどり等
屋号は、再度、開業届(個人事業の開廃業等届出書)を提出することによって、後から決めたり変更することもできます。
⑤ 氏名の横に印鑑を押します。
印鑑は実印でも認印でも大丈夫です。
この印鑑を家に忘れてしまいやすく、ある意味で開業届を提出する上での最大の難関です。
⑥ 届出の区分:届出の区分の「開業」に〇をつけましょう。開廃業日には事業を開始した日を記入します。
⑦ 開廃業に伴う届出書の提出の有無:青色申告承認申請書を一緒に提出する場合は「有」に〇をつけましょう。
以下は一般的な内容です。(もし一般的でなく、間違えていても、その場で対応できるのでご心配なく)
⑧消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」:通常は「無」に〇をつけます。
⑨ 給与等の支払いの状況:自分1人の場合、専従者の欄に「1人」と記入し、給与の定め方には「月給」と書きます。
源泉所得税の納期の特例に関する申請書を一緒に提出する場合は「有」に〇をつけましょう。
⑩ 事業内容:「具体的に」と書かれてはいますが、ざっくりでも大丈夫です。
(=家庭教師、せどり等)
以上、開業届の書き方でした。
とても簡単ですので、身構えず「印鑑を持って、とりあえず税務署に行く」というくらいでも問題ないです。
開業届を提出する方法
「開業届」(個人事業の開廃業等届出書)とは、個人事業を開業してから1ヵ月以内に税務署に届け出なければならない書類のことです。
開業届の用紙(個人事業の開廃業等届出書)は税務署で簡単にもらうことができますが、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
提出するのは簡単で、開業届(A4用紙)を提出用と控え用で、同じものを2枚(2枚以上)税務署に提出するだけです。
提出した開業届のうち、1枚目が提出用、2枚目以降が控え用となります。
銀行口座の開設等で、控えが必要となってくる機会もあるので、多めに「控え」を手に入れておくといいです。
控えは、これ以降、簡単には入手できないので、もし「控え」を多めに入手しておかないと、どうしても必要になったときに本当にめんどくさいことになります。
控え用の開業届は、税務署の印鑑を押してもらうために提出します。
この印鑑は、その控えが正式な書類であることの証明となります。
この開業届を提出すれば、個人事業主となります。
まとめ
開業届を提出するのはとても簡単です。
そして開業届を提出することによって得られるメリットがたくさんありますので、事業を開始するときには、開業届を忘れずに提出しましょう。
開業届と一緒に提出するであろう青色申告承認申請書については、以下の記事に記載しています。
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